水球日本代表のエース稲場悠介(ブルボンKZ提供)
水球日本代表のエース稲場悠介(ブルボンKZ提供)

「勝っても負けても、気持ち良い試合がしたい。そのほうが、お客さんも面白いでしょう。だらだらとパス回しをしているのを見るよりも、シュートの打ち合い、得点の奪い合いのほうがスリリングで見応えがある。そうやって会場を沸かせる試合をしたい」

 前回のリオデジャネイロ五輪において、男子水球チームを32年ぶりの五輪出場に導いた、大本洋嗣ヘッドコーチの言葉だ。

 本来、ボールゲームの見どころは、得点シーンにある。サッカーでもバスケットボールでも、シュートシーンは人の心をわくわくさせる力を持っている。水球にも、そんな魅力があるんだ、と声を上げたのが大本ヘッドコーチだった。

 ヨーロッパ諸国では、プロリーグも行われるほどの人気スポーツ。2m近い体躯の選手たちが、プールを縦横無尽に泳ぎ、ボールを操り、時速70kmにも到達するシュートを放つ姿は見応え十分だ。

 そんな巨体の海外選手たちが得意とする戦略が、ゾーンディフェンスと呼ばれるゴール前をしっかりと硬めて守るディフェンス。攻撃も30秒という時間をたっぷり使ってゆっくりとゴールに迫っていく。

 対して日本は『パスラインディフェンス』と呼ばれる、機動力を武器にした戦略で挑む。相手のパスコースを遮断し、シュートを打たれる前にボールを奪う。奪ったらカウンターで一気に攻め込む。まさに、得点の奪い合いに持ち込む戦略だ。

 海外からも絶賛されたこの戦略を今ではさらに進化させ、ゾーンディフェンスを組み合わせた新たなパスラインディフェンスを構築。少しずつではあるが、世界と肩を並べて戦えるまでに成長してきた。

 東京五輪本番は、男子は12チーム、女子は10チームが参戦。男女ともグループA、Bに分かれて総当たりの予選を行い、それぞれのグループの上位4チームが決勝トーナメントに進出できる。男子は南アフリカ、アメリカ、ハンガリー、ギリシャ、イタリアのグループA、女子はロシア、中国、ハンガリー、アメリカのグループBに入った。

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東京五輪での躍進はあるのか?