煉獄が遺したこの言葉が、炭治郎をさらに強くした。

■心を燃やし「強く」なった炭治郎

 無限列車編以降、さまざまな場面において、炭治郎は煉獄の言葉を胸に抱きながら戦うようになる。まちがいなく炭治郎は「強く」なった。数えきれない悲しみと懺悔と、「かつては人間であった鬼」を殺すという葛藤を抱えながら、宿敵・鬼舞辻無惨の打倒を誓う。

<負けるな 燃やせ 燃やせ 燃やせ!! 心を燃やせ!!!>(竈門炭治郎/9巻・第77話「轟く」)

 ある時、炭治郎はこんな願いをつぶやいた。人間のまま死ぬことができますように。みんなのもとに帰ることができますように。あたりまえの毎日が、全ての人に訪れますように。この願いがかなう日まで、炭治郎は戦い続ける。―「俺は…俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します!! 俺と禰豆子が必ず!! 悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」かつて誓った、その言葉どおりに。

◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。

著者プロフィールを見る
植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

植朗子の記事一覧はこちら