7歳の息子に「食べ残しはいけない」と教育する夫。逆に「体調が悪くなるなら残してもいい」と甘やかす妻に、夫はどうしたらいいのか悩んでいます。最近は、行き過ぎた完食指導がトラウマになり、人と一緒に食事をすることを苦痛に感じる「会食恐怖症」も注目されています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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【相談者:7歳の息子を持つ40代の父親】
 7歳の息子を持つ40代の父親です。息子がご飯を残すことについて妻と意見が割れています。息子は食欲にムラがあり、量を少なくしても食べ残してしまうことが多いのですが、私は「作った人に失礼だから絶対に残してはいけない」という考えです。私自身、幼少期から「出された料理は完食しなさい」という教えのもと育ち、食べ残しは許されませんでした。先日、息子が、体調が悪いのを理由に晩ご飯を残し、妻が「無理しなくていいよ」と、捨ててしまいました。妻の母親は「無理して食べると気持ち悪くなるから口に合わないものは残していい」という考えの人です。私は許せず、「食べ物を残していいのか?」と息子を強く叱りました。しかし妻には、「無理やり食べると、後でもどしてしまい、食べることそのものが苦痛になる。『いやなら残していい』と教育されてきた私は今、何でも食べられるから、好き嫌いには影響ないはずだ」と反論されました。私の考えが間違っているでしょうか? 

【論語パパが選んだ言葉は?】
・「君子の天下に於(お)けるや、適(よ)きも無(な)く、莫(あ)しきも無し。義にのみ之(こ)れ与(とも)に比(した)しむ」(里仁第四)

・「忠(ちゅう)もて告げて善もて之れを道(みちび)く、不可なれば則(すなわ)ち止(や)む。自(み)ずから辱(は)ずかしめらるること無かれ」(顔淵第十二)

・「斉(せい)に在(あ)りて韶(しょう)を聞く。三月、肉の味わいを知らず」(述而第七)

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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