Q 「毛嫌い」は、何の毛が嫌いなの?
A 馬の毛

 馬の仲買を行う博労(ばくろう)の世界では、牝馬(ひんば)が種馬を嫌って種付けがうまくいかなかったときに、牝馬が種馬の毛並みを嫌ったと考えました。そこから、明確な理由なく嫌うことを「毛嫌い」というようになったといいます。また、馬に限らず鳥獣が毛並みによって相手を嫌うことが基になったとする説もあります。ほかに、「け」は「けだるい」「けおされる」などと同じ接頭語で、「なんとなく」という意味があるともいわれています。

Q 「皮切り」が「はじまり」を意味するのはなぜ?
A 最初にすえるお灸を「皮切り」と言ったから

 最初にすえるお灸は「皮切りの一灸(ひとひ)」というように、皮が切れると感じるほど熱く痛いといいます。そこから最初のお灸を「皮切り」というようになり、転じて物事の始まりの意味で用いられるようになりました。1603年ごろに発行された、日本語をポルトガル語で解説した『日葡(にっぽ)辞書』にも、「皮切り」は「日本人が治療のために最初にすえるお灸」と説明されています。

Q 「図星」っていう星があるの?
A 弓矢の的の黒い丸のこと

 図星とは、もともと弓道などの的の中心にある黒い点のことです。そこから、「狙ったところ」「急所」などの意味になり、さらに「人の思惑が的中する」という意味で用いられるようになりました。江戸時代には、単に「星」ということもあったといいます。

Q 「食指が動く」ってどんな指が動くの?
A 人さし指

 中国の『春秋左氏伝』という歴史書に、鄭(てい)の国の公子宋という人物は、ごちそうにありつく前兆として人さし指がピクピクと動いたという故事があります。そこから食欲がおこることを「食指が動く」というようになり、さらに物が欲しくなったり、やる気が起きたりするときにも使われるようになりました。

Q 「呂律が回らない」とは「舌がまわらない」こと?
A 「呂律」は雅楽の音階のこと

 舌がよくまわらず、言葉がはっきりしないことを「呂律が回らない」といいますが、「呂律」は「舌」の意味ではありません。「呂律」は、日本の伝統的な音楽である雅楽の音階を表す「呂律(りょりつ)」が訛ったものです。雅楽には「呂」の音と、「律」の音があり、この二つの調子が合わないと美しい和音にならないといいます。そこから、「呂律」は音の調子という意味でも用いられるようになり、さらに転じて言葉の調子を表す「呂律」になりました。

文/美和企画
※『みんなの漢字』2014年9月号から