Q 「南」を「指す」ことが、なぜ教える意味になるの?
A 南を指す「指南車」に由来する

「指南車」は、方向指示装置を載せた古代中国の車です。方位磁石のように自ら方位を示すわけではなく、指南車の上に据えられた仙人像の指をあらかじめ南に向けておくと、車が向きを変えても歯車の仕掛けで仙人像の指は常に南を指しているというものです。古代中国の皇帝である黄帝がつくったともいわれ、戦で周囲が霧に覆われた際に「指南車」のおかげで助かったという伝説も残っています。方向を示して導くことから、教え導くことを指南というようになりました。

Q 「試金石」ってどんな石?
A 貴金属の純度を測るための石

「オリンピックへの試金石となる試合」というように、力量や価値などを判定するための基準となる物事を「試金石」といいます。試金石はもともと、貴金属の純度を測るための黒い石です。貴金属をこすりつけて、残った痕の色から純度を判定します。日本では、三重県野市の名産として知られる「那智黒(なちぐろ)」という石が古くから用いられていました。

Q 「土壇場」ってどんな場所?
A 処刑場

「土壇(どだん)」は、盛り土で一段高くなった場所のことです。近世に、そこで斬首刑を行ったことから、処刑場のことを「土壇場」というようになりました。処刑場が命を絶たれる最後の場所であることから、物事のせっぱつまった場面などを「土壇場」というようになりました。読みが「ドダンバ」から「ドタンバ」に変わった時期はわかっていません。

Q 「ベイゴマ」の「ベイ」って何?
A 貝(ばい)がなまって「べイ」になった

「ベイゴマ」が子どもたちの遊びとして広まったのは、平安時代とも、室町時代ともいわれています。もともとは、「バイ」とよばれる巻き貝の殻に砂や粘土をつめて独楽にしたことから、「貝独楽(ばいごま)」とよばれていました。のちに関東に伝わると、なまって「ベイゴマ」になりましたが、関西では今も「バイゴマ」「バイ」とよばれています。なお、よく知られている鉄製のベイゴマは、明治末期から大正中期につくられ始めました。

Q 「埒(らち)が明かない」の「埒」って何のこと?
A 馬場の周囲を囲う柵

「埒」とは、囲いや仕切りのことで、特に馬場を囲う柵をさします。本来は、柵がなくなると自由に行き来できることから、「物事がはかどり、決まりがつく」という意味で「埒が明く」と使われていましたが、現在は否定形の「埒が明かない」のほうがよく使われています。同じ「埒」を用いる言葉に、道理に外れているという意味の「不埒」や、一定の範囲の外という意味の「埒外」などがあります。

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「呂律が回らない」の「呂律」=舌ではない