■心身の不調のほか体重が増加しやすい

 不調を感じやすくなるのは、テストステロンが急激に減少した場合だ。自覚症状は、健康状態の低下を感じる、疲れやすい、不眠、ほてりやのぼせ、急な発汗がある、筋肉痛や関節痛がある、イライラする、物事を決められない、興味や意欲がわかない、性欲が減退するなど多岐にわたる。

 テストステロンが急激に減少する原因となるのがストレスだ。「仕事時間が長い」「仕事量が多い」「勤務時間が不規則な仕事をしている」など仕事のストレスもあれば、退職して社会からの疎外感を感じているといったケースもある。例えば定年退職後、家に引きこもってボーッとしているような場合に、テストステロンの低下が考えられるという。

 男性更年期障害は、特徴的な症状がなく、発症する時期も幅広いので、自覚しづらく、受診につながりにくい。堀江医師によると、前述した症状に加えて、体重の増加が目安になるという。

「典型的なのが、食事量や運動量は変化していないのに、体重が増加するケースです。テストステロンには、さまざまな作用がありますが、筋肉量や筋力の維持もその一つ。テストステロンが減少して筋肉量や筋力が落ちると、脂肪が増えます」(同)

 70代以上の場合は、姿勢を維持しづらく、ソファに座っていても姿勢を保てないというのが特徴的だという。

 男性更年期障害は、症状や血中テストステロン値によって診断する。症状は「AMSスコア(加齢男性症状調査票)」などでチェックし、血液検査で測定したテストステロン値が300~350ナノグラム以下でほかに明らかな病気がない場合に「LOH症候群」と診断される。

■筋肉注射でホルモンを補充

 テストステロン値が明らかに低い場合は、テストステロン補充療法を実施する。現在保険が適用されているのは筋肉注射のテストステロン製剤で、2~4週間おきに投与する。長期間投与すると、精巣機能が低下するリスクがあるので、期間は1年程度が目安となる。肝臓の病気や睡眠時無呼吸症候群などがある人は、原則使用できない。

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