失神KO負けを喫した朝倉未来(写真/gettyimages)
失神KO負けを喫した朝倉未来(写真/gettyimages)

 紫色に大きく腫れた右目に氷水を当てて、暗い花道を歩く姿が痛々しい。完敗だった。

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 東京ドームで13日に開催された「Yogibo presents RIZIN.28」のメインイベントで朝倉未来がクレベル・コイケに2ラウンド途中の1分51秒、三角絞めで敗れた。立ち技の朝倉、柔術で寝技に持ち込みたいクレベルとスタイルが違う二人の対決で、1ラウンドは朝倉の左右からの強打でクレベルを追い込んだが仕留めきれず。勝負が決まったのは2ラウンド。一瞬だった。クレベルがローキックでコーナーに追い詰めると、テイクダウンで三角絞めに。朝倉はタップせずに意識が飛んでいた。レフェリーがストップをかけると、クレベルは歓喜のガッツポーズを何度も繰り返した。

 朝倉は試合後のインタビューで、「悔しいですけれどやってよかったというのがあります。(クレベルは)結果的に強かったと思います」と試合を振り返り、「今後のことは一度考えます。引退も含めて…、ちょっと考えてみてって感じです」と現役引退を示唆。自身のSNSでも、「完敗 記憶もあるので大丈夫です やることはやってきたので後悔はないけど、素直に悔しい 今後のことは少し考えます けど格闘技という道にきて、歴史的な東京ドーム大会のメインで試合出来たことは一生忘れないです」と綴った。

 格闘技雑誌の編集者はこう分析する。

「クレベル選手の技術が上回っていました。立ち技で朝倉未来が圧倒できなかった。試合後に引退を示唆したのは驚きましたが、実際に対戦して大きな差を肌で感じたと思います。恐らく現状の実力だと何度対戦してもクレベル選手が勝つでしょう。それぐらいの差がある。ただこのまま引退してしまうのはもったいない。あれだけの格闘技センスを持った日本人選手は稀有ですから」

 朝倉は天才肌の選手だ。もちろん努力もしてきた。だからこそRIZINのトップ選手に上り詰めた。一方でトレーナーをつけず独自のスタイルで、練習量も決して多くない。風向きが変わったのは昨年11月21日に大阪城ホールで行われた「RIZIN.25」のフェザー級初代王者決定戦で、斎藤裕に敗れた試合だった。朝倉有利の下馬評が多数を占めたが、2、3ラウンドにテイクダウンを奪い、前に出続けた斎藤が判定勝ちし初代王者に。朝倉は攻撃面の引き出しの少なさを露呈した。

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