ドラフト1位指名の可能性もある東北福祉大の椋木蓮(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)
ドラフト1位指名の可能性もある東北福祉大の椋木蓮(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)

 慶応大の34年ぶり4回目の優勝で幕を閉じた全日本大学野球選手権。昨年の早川隆久(早稲田大→楽天)、佐藤輝明(近畿大→阪神)のような複数球団競合確実な目玉選手は不在で、プロのスカウト陣からも候補が少ないという声も多かったが、それでも将来が楽しみな選手は決して少なくなかった。今回はそんな大学選手権で存在感を示したドラフト候補をピックアップして紹介したいと思う。

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 まず投手で最も評価を上げたのは隅田知一郎(西日本工大)になるだろう。大会初日に上武大に0対1で敗れて早々に姿を消したが、それでも8回を投げて被安打わずかに4、14奪三振と圧巻のピッチングを見せた。ストレートのアベレージは140キロ台前半から中盤程度で、驚くようなスピードがあるわけではないが、しっかりとコーナーに投げ分ける制球力があり、ここ一番でギアを上げられるのも大きな長所だ。打者の手元で鋭く変化するスライダー、ブレーキ抜群のチェンジアップとスプリットと決め球として使える変化球も多く、更に緩いカーブで緩急をつけることもできる。総合力の高いサウスポーだけに、2位以内で指名される可能性は高いだろう。

 左投手でもう一人高い注目を浴びたのが黒原拓未(関西学院大)だ。1回戦の松山大戦では7回を投げて1失点、8奪三振と見事な投球でチームの勝利に貢献。準々決勝の慶応大戦では5回4失点で負け投手となったが、自責点は2と決して大きく崩れたわけではない。ストレートはコンスタントに145キロを超え、173cmという上背以上にボールの角度があるのも魅力。変化球は隅田に比べると少し不安定な印象だが、上手く抜けた時のチェンジアップは空振りを奪えるだけのブレーキがあった。どちらかというと短いイニングの方が持ち味が生きるように見え、リリーフに専念すれば高橋聡文(元中日)のようなタイプとして大成しそうな雰囲気がある。こちらも貴重な左腕だけに、獲得を狙う球団は多いだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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