※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 看護師や介護職の人には腰痛が多いなど、職業によってなりやすい病気があります。歯周病はどうなのでしょうか? 実は「歯周病の発症リスクが高い職業」を明らかにした研究があります。そこに共通するのは生活習慣だと歯周病専門医の若林健史歯科医師は語ります。研究内容について解説してもらうとともに、「間食をしているけれど、口腔ケアは頑張っている」という人と、「口腔ケアはそこまで徹底していないけれど、間食はしない」という人でどちらが歯周病になりやすいのか聞きました。

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 歯周病になりやすい職業とはどのようなものでしょうか。

 岡山大学病院予防歯科講師の入江浩一郎歯科医師(現・明海大学講師)らの研究グループは2016年、歯周病の発症リスクが職種によって異なるという研究を発表しています。

 研究では歯科を受診した3390人を対象に5年間の追跡調査を実施。男性の32%、女性の24%が歯周病になり、この人たちを分析した結果、「生産、労務、販売、運輸、通信の仕事をしている人」(いずれも男性)は、「専門的技術的職業(大学の研究員や、農林水産技術者、エンジニア、土木・建築技術者など)」に比べ2倍以上、歯周病になりやすいことがわかったのです。なお、女性では職業別で差は出ませんでした。

 私はこの結果を見て、該当する職業の人が歯周病になりやすい一番の理由は、「生活習慣」にあると思いました。

 まず、こうした人たちは歯みがきを中心とした口腔ケアを徹底するのが難しい労働環境だろう、と思われるのです。

 歯周病の大きな原因は細菌の塊であるプラーク(歯垢)です。プラークは歯についた食べかすに集まり、これをエサに繁殖して歯ぐきなどの歯周組織を破壊するため、食べかすおよびプラークを取り除くこと、すなわち、食後の歯みがきやデンタルフロスなどの口腔ケアが欠かせません。しかし、長時間労働で睡眠、休息がとりにくいこれらの仕事では、なかなか大変でしょう。例えば運輸業の代表であるトラックやタクシーのドライバーなどが決まった時間に休憩をすることは難しく、パーキングエリアや路肩で休憩した場合、そこで歯みがきをすることは現実的ではありません。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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