三振を取るたびに「ガオーッ!」と吠え、ゲームセットの直後、捕手の藤田浩雅がマウンドに駆けつけると、グラブをはめた左手でカウンターブローをお見舞いした。

 本人は力を加減しているつもりなのかもしれないが、198センチ、104キロの巨体から繰り出されるパンチの威力はハンパではなく、藤田は脳震とうを起こしたこともある。以来、マウンドに行くときは、マスクとプロテクターでガードするようになった。

 過激なパフォーマンスについて、アニマルは「ユニホームを着れば、ファイトをむき出しにするのは当然だろう。特にストッパーは力でねじ伏せなければならない。ファイトが高まれば、オーバーアクションになる」と説明していた。

 だが、野獣のようないかつい外見とは裏腹に、「登板前に震えていた」という証言もあり、そんな弱気を奮い立たせるための行動だったようだ。

 1年目は7月前半までに13セーブを挙げ、オールスター出場も、夏場以降、急失速し、わずか2年で退団したのが惜しまれる。

 単なるパフォーマーで終わらないよう、プレーで文句なしの実績を残すことも、ムードメーカーの必須条件なのである。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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