頭の中でゴローになりきって、楽しんでみるといいと思います。何を食べたらいいのか、五郎風のナレーション付きで悩んでみたり、他の客が食べているメニューを見て「しまった、あっちにすればよかった」とか(笑)。頭の中って自由です。口に出さずに脳内だけなら、「まっずいなー、店長食ってみろよこれ!」とかなんでも言える(笑)。

――一人メシが当たり前にできる人もいれば、なじみのない店などでは抵抗があるという人もいます。興味はあるけれどためらっている「一人メシ入門者」に向けて、何かアドバイスがあれば教えてください。

 一人で楽しまなきゃという“やらなきゃ感”を出してしまうと、なんだか肩に力が入ってしまってそれこそ楽しめないでしょう。作中の五郎も、何ひとつがんばってないし、ガツガツ楽しもうとはしていない。ただ、腹が減った、仕方ねえなといった感じでいいと思います。(五郎も)そんなに、おいしいおいしい騒いでないじゃないですか(笑)。

「吉野家ひとりめしデビュー」みたいな身近なところから始めてみればいいんじゃないですかね。案外自意識過剰なだけだと気づくはずです。日本では、一人客に対してたいがい親切です。

――いち市民として、そして「孤独のグルメ」作者として、実際に飲食店を支援するような心がけがあれば教えてください。

 僕は、時短営業をしている飲食店に行くために、早めに仕事を切り上げてます。そのために早起きしてます。飲食店の支援は、結局行って食べる以外にない。それ以外、漫画家の僕にできることは、面白い漫画を描くこと。それに尽きます。ちょっとクスッとしたら、それだけで少し気が楽になる。一緒に少しでも笑って、この苦しい日々を乗り越えて、居酒屋のおいしいビールで乾杯したいです。

(構成=AERA dot.編集部・飯塚大和)