「デパートなんかでうろうろしている子どもは難しい。近くに親がいるかもしれないしね。不審者と思われて通報されてしまうかもしれない。よほどの子どもが泣いているとか、明らかに迷子だとわからないと、声はかけられません」

 これには全国的な防犯教育の徹底も影響している。

 例えば、船橋市の小学校の場合、防犯上有効とされる5つの行動指針を繰り返し子どもたちに教えている。これは「いかのおすし」と呼ばれる防犯標語で、「行かない、乗らない、大きな声を出す、すぐ逃げる、知らせる」の頭文字を組み合わせたもの。小学校に入学してすぐに、これらを学び始める。それらが徹底しているだけに、防犯活動のための声かけも難しく感じるときがあると南雲さんは話す。

 これまでも、悲しい事件になる前に誰かに声をかけてもらえたら、そうならずに済んだことはあったはずだ。前出の重成さんは、あらためて防犯活動の重要性を説く。

「迷子だと思った際には、願わくば声をかけていただき、その場で110番通報してほしい。声をかけづらければ、通報して、ちょっと遠巻きから見ていていただいく。警察官がやってきて、たとえ、それが迷子でなかったとしても、その通報が非難されるということには決してなりませんので。みなさんのご協力の積み重ねによって守られる子どもたちの命が確実にあります。その事実を知っていただきたいと思います」

(文/AERA dot.編集部・米倉昭仁)