為末さんは、それは大坂選手の「優しく、繊細な性格の裏返し」だとも推測する。トップに登り詰めた大坂選手は、口ぐせのように「アイム・ソーリー」ともらす。2018年の全米オープンの決勝戦で、チャンピオンのセリーナ・ウィリアムズ選手に勝ち、優勝した時、涙ながらに詫びる場面があった。セリーナ選手が勝つとされた試合で自分が勝ってしまったことに大坂選手は「ソーリー」と言い、会見で「なぜ謝るのか」と問われた。欧米人からしたら、そこは笑顔で喜ぶところ。そんな姿は、大坂選手の日本人らしさを垣間見るような瞬間でもあった。

「大坂選手の振る舞いを見ていると、日本人らしい印象を受けます。自身でも『内向的』と言っていますが、20歳頃の日本人女性としては納得のいくところもあります。『アイム・ソーリー』とよく口に出てくるのは、おそらく内向的な部分が言葉に出ている。結果に対して、他人を責めるよりも自分の責任を感じる傾向があるのだと思います。それだけ繊細で優しい人なんですね。そこがチャーミングで、魅力的なキャラクターになっているのだとも思います。それも彼女がプレイ以外の面を見せてくれたからこそ知ることができたことなんですね」

 こうした大坂選手の優しさや繊細さは「弱さ」ではない。パフォーマンスを左右するアスリートとしての能力とは別物だということだ。大坂選手にとって、今は十分な休養が一番だと為末さんは労う。(構成・AERAdot.編集部 岩下明日香)

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