その際、最初のセッティングはグッと絞り込み、「本当に重要なことだけを部下や後輩たちに提示する」ことも鉄則。初期設定が絞り込まれているほど、複数いるチーム員各自の解釈によって生じる誤差・バグを減らすことができ、チームとして産出できるパフォーマンスが拡大する。


 
 さらに、その「旗」を立てるにあたり、内村はチームメンバーそれぞれが頑張らないと手に届かないような、ちょっと先に目標の旗を立てる。
 
 この「少し向こうに」という部分がポイントとなる。
 
 人を動かすリーダーたちは、チーム員が頑張れば超えられそうな“絶妙な高さ”にハードルを設定することがうまい。
 
 制作会社・SLUSH-PILE.代表取締役の片山勝三氏も、「内村さんのハードルが高いから、しんどいですよ、スタッフめっちゃしんどいです、共演者もしんどいです。次なんか言ってきたら、もう断ろうと。さすがに無理や、断ろうと毎回思うんですけど、内村さんが跳ばしてくれるのか、ギリギリ跳べちゃうんですよね。だからまた言われたら、いいっすねって口をついてしまう」と笑う。
 
 少し向こうに「旗」を立てることで、チームの全員が共通目標を持てる状態にできる。するとたとえリーダーが子細に指示を出さなくとも、その「旗」を越えるために己がやるべきことを、各自がきちっと想像し、動けるようになる。
 
 この「想像できる距離」ということがみそであり、それにより部下や後輩が迷子にならない「程よい放牧」となる。リーダーが想像もつかない目標を設定してしまっては、部下や後輩はどこから手をつけていいか、手掛かりに窮してしまうだろう。
  
 だからこそ、“頑張れば超えられそうなハードル”を課す必要があり、部下がそれに納得して目標を受け入れることで、「自発的な努力」を引き出すことができる。
 
 前出・伊藤氏によると、収録後に行われる反省会でも(反省会と称しているが)、「おもしろかった」「特にあそこは良かったね」などの良かった点を、必ず内村から発するという。基本的には、おもしろかったということを伝え、「あそこに関してはどうだったのか」などという指摘はめったにないと、そのやりとりを振り返る。
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モチベーションの好連鎖