■伊東純也(ヘンク)

欧州挑戦初年度から安定した活躍を見せていた快速ウインガーだが、今季はさらに一段上のレベルに到達した。2020-21シーズンは公式戦42試合に出場、12ゴール16アシストをマーク。カップ戦の決勝でもタイトルをもたらすゴールを奪い、ジュピラーリーグのシーズンベストイレブンにも選出される働きぶり。今やベルギー屈指のアタッカーだ。

主戦場はこれまで通り右サイドのタッチライン際であるが、ボールの有り無しにかかわらず、今季はプレーの選択肢が大幅に広がっている。周囲の選手をうまく活用しながら、カットインから逆足シュート、それをちらつかせながらワンツーでボックス内に侵入、はたまた縦突破から鋭いクロス……元同僚キャスパー・デ・ノーレが「止められないよ。予測できないんだ」と嘆くのもうなずけるパフォーマンスの連続だった。日本代表でも、その姿は堂々たる風格すら感じさせる。

そんな伊東にはベルギー国内外から熱視線が注がれているが、本人もステップアップに前向きだ。以前から2021年は「より高いレベルに挑戦したい」と語っていたが、先日改めて「チャンスがあれば上のリーグでやりたい」と明言した。ヘンクは1000万ユーロ程度を要求すると見られており、彼の状況も注視すべきだろう。

これまでベルギーメディアで最も名前が挙がったのは、昨季王者のクラブ・ブルージュ。だが、アンデルレヒトGKコーチのフランク・ブークスが「ベルギーリーグにとっては“良すぎる”と思う」と語ったように、十二分に欧州5大リーグでも通用するレベルだ。本人も「5大リーグのどのチームに行くかが問題」と意欲を燃やしている。アタッカーが輝けるフランス、ウイングに一対一の突破力が求められるブンデスリーガなどがフィットしそうだが、本人はいかなる決断を下すのだろうか。

■鈴木優磨(シント=トロイデン)

日本が誇る“本格派ストライカー”にとって、覚醒の1年だった。ジュピラーリーグのレギュラーシーズン全34試合に先発し、積み重ねたゴール数は「17」。欧州主要リーグの日本人記録を更新した。クラブの年間MVPに輝いたが、それも当然の結果だろう。日本代表に呼ばれないことが不思議で仕方がないほどだ。

本人は『DAZN』の番組内で「自分より若い選手と組んでいた時は難しかった」と序盤戦を振り返ったが、その経験があったからこその結果とも言える。ピッチ上での振る舞いはチームを引っ張るという気迫を感じさせ、それと同時に、チャンスシーンでは頭を冷静に保ちながら的確にポジションをとってゴールを積み重ねていった。また、ゴールから遠ざかっていた同僚にPKを譲ったり、試合後のインタビューでも「人に良いことをしたら必ず返ってくる」、阪神・淡路大震災の発生から26年後の1月18日には「ここでサッカーができているのは当たり前じゃない。生きられなかった人たちの分まで、自分がここで精いっぱいやらなきゃいけないんだと思っていた」と話すなど、精神的にも非常に成熟した。心身ともに最高の状態を保ち続けたことは手放しでほめたたえるべきだ。

そんな鈴木もステップアップ希望を明言。ペーター・マース監督も「クラブを去るのはすでに決定している」と語っており、今や注目はその新天地がどの国、どのクラブになるかだ。ここまでヘルタ・ベルリン(ブンデスリーガ)のオファーを断ったこと、トルコの強豪フェネルバフチェやトラブゾンスポルが獲得に動いていることが報じられている。

これまで憧れのセリエA挑戦を目指すと語ってきた鈴木だが、“守備の国”イタリアはストライカーにとって生きるのが非常に難しい国。リーグ自体が日々進化しているとはいえ、下位クラブでは攻撃を構築するような展開はなかなか見られず、最前線には独力で「なんとかする」アタッカーが求められる。もちろん何が起きるかわからないのがサッカーであるが、苦戦は必須。数年間フランスなどでさらに自身を磨き、絶頂期に満を持して挑戦するのがベストな選択と言えるのではないだろうか。

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東京五輪世代の“あの選手”は…