予約が埋まらない対策として検討されているのが、64歳以下のワクチン接種だ。余ったワクチンを先着順で一般の人にも接種させることを検討しているという。しかし、各自治体では65歳以上の高齢者への優先接種を進めている最中だ。64歳以下のワクチン接種券もまだ送れていない自治体も多い。

 接種券の配送スケジュールを自治体に示している厚生労働省でも頭を悩ますところだ。接種券を一斉に配布すると、予約や問い合わせが殺到し、混乱が生じる。そのため、地域ごとや50音順、年齢で配布する時期をずらすなどの必要がある。担当者はこういう。

「自治体も早く接種券を出してしまうと、コールセンターがパンクしたりするので、徐々に出していくしかない。どちらかというと自治体が上手に舵取りできるような形で考えないといけない。接種券なしでも打つとなると事務手続きをどうするのか。そもそも混乱なくできるのかということも含めて、これからの議論ですね」

 先の防衛省関係者はこう懸念を漏らす。

「大規模センターが閑散とすると、無駄遣いと批判される。それを回避するため、65歳以下の一般接種を言い出した。まだ医療従事者のワクチン接種も終わっていない状態です。いつでも誰でも予約、接種できるのは一見、よいことのようにも見えるが、政府がなし崩し的なことを始める訳で接種を担う市区町村は大混乱でしょう。河野大臣は『接種券なんてなくても打てばいい』などと格好のいいことを言っていますが、迷惑をこうむるのは現場の自治体です」

 せっかくワクチン、機器を無駄にしないためにも、声なき声にもっと耳を傾けたほうが良さそうだ。(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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