この試合は7回まで0対0という息詰まる展開だったが、それでも最後まで自分のペースを崩すことがなく、安定感には目を見張るものがあった。この試合での最速は142キロと驚くような速さがあるわけではないが、ストレートも変化球も両サイドにしっかり投げ分けており、ボールの角度も申し分ない。高校生の大型左腕で、これだけ制球が安定しているというのは非常に貴重である。夏にストレートが145キロを超えてくるようなことがあれば、左腕の候補が少ないだけに一気に上位候補に浮上してくるということも十分に考えられるだろう。

 右投手では竹山日向(享栄)と中沢匠磨(白鴎大足利)の2人を紹介したい。ともに下級生の頃から素質の片鱗を見せていたが、故障で少し停滞したという点で共通している。竹山は東海大会の準決勝で先発したものの、脚の故障明けということもあって3回で降板。ただそれでも強力打線の中京(岐阜)を相手に被安打1、5奪三振で無失点と見事な投球を見せた。全体的に重心が高く、まだまだ本調子という感じではなかったがそれでもストレートは最速143キロをマーク。スライダー、フォークも高レベルでどちらも決め球として有効だった。春先の練習試合では1位候補の小園健太(市和歌山)にも投げ勝っており、夏は完全復活が期待される。

 中沢は昨年6月に行われた横浜(神奈川)との練習試合で2回をノーヒットと見事な投球を見せてチームの勝利に貢献。この時既に最速は142キロをマークしていた。その後右肩を痛めたこともあって苦しい時期が続いたが、この春にようやく復帰。栃木県大会の準決勝では7回から登板して決勝のホームランを浴びたものの、ボールの角度はやはり素晴らしいものがあった。ポテンシャルの高さは申し分ないだけに、夏までにどこまで状態を上げられるかに注目したい。

 野手は選抜でも捕手に好素材が多かったが、出場を逃した選手の中で推したいのが加藤晴空(東明館)だ。投手も兼任しているということもあって地肩の強さは抜群だが、それに頼り過ぎることなくしっかりとフットワークを使って投げられるのが大きな長所。コントロールも安定しており、実戦でも落ち着いた正確なボールで盗塁を阻止する。バッティングに関してはもう少し力強さが欲しいところだが、1番を任されていることからも分かるように運動能力の高さは申し分ない。同じ九州では選抜にも出場した川上陸斗(福岡大大濠)も注目の捕手だが、総合力では決して引けを取らない存在と言えるだろう。

次のページ
外野にも“大化け”の可能性秘める選手