ダルビッシュ有投手(写真/GETTYimages)
ダルビッシュ有投手(写真/GETTYimages)

 5月29日(現地時間:以下同)、敵地ヒューストンで行われたアストロズ戦に登板したダルビッシュ有は、5回4安打5失点(自責点4)の成績となった。結果だけみれば良いとはいえず、普段ダルビッシュを高く評価しているパドレスの地元紙『サンディエゴ・ユニオン・トリビューン』のケビン・エース記者も「今季最低の内容だったといわざるを得ません」と珍しく厳しい評価を述べた。

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 大手メディア『CBSスポーツ』は、「ダルビッシュはヒューストンを相手に不安定だった」と報じ、この日のダルビッシュは本来の姿からはかけ離れていたことを指摘した。試合序盤から制球は定まらず、4つの与四死球を出してしまうほど不安定であった。ダルビッシュ自身もYouTubeライブ配信を通してこの日の試合について振り返り、スライダーやカーブ、そしてカットボールの調子があまり良くなかったといい、本調子ではなかったと苦しい胸の内を明かしている。

 だが、長いシーズンを見れば誰にでも調子の良くない日はある。また、ここ最近のダルビッシュの調子を知っていれば、この日の結果を決して深刻に捉える必要はないともいえるだろう。しかし、今回に限ってはダルビッシュとアストロズの間にある過去のとある因縁によって、制球に苦しむダルビッシュの姿が、現地メディアでもより大きく取り上げられることとなった。

 ダルビッシュとアストロズ。この言葉を聞くと現地ではどうしても2017年のワールドシリーズが思い起こされるようだ。当時、何が起こったかをご存知の方も多いのではないだろうか。当時ロサンゼルス・ドジャースの一員だったダルビッシュは、その年のワールドシリーズで2試合に先発したが、いずれの試合もアストロズ打線に打ち込まれてしまい大炎上。結果優勝を逃し、ファンやメディアは、ダルビッシュがその主な原因を作ったと激しく非難した。しかし、2019年末、それらの試合でアストロズはゴミ箱を叩いたり、電子機器を用いたりして、相手投手の球種やコースを打者に知らせるという不正を行っていたことが発覚した。

 それ以降、「ワールドシリーズでの炎上は相手チームの不正行為によるもので、彼はその被害者だ。彼の本当の実力はこんなものではない」と世間のダルビッシュへの評価は大きく変わった。しかも、ダルビッシュは、アストロズとはそのワールドシリーズでの一件以降、一度も対戦していない。だからこそ、3年7カ月ぶりとなるこの試合で、「不正行為を行ったチームを叩きのめしてほしい」という期待も大きく、結果に落胆する声も多かった。

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