「つけ心地がサラサラなおりものシートを使うと、ときには、それが接触性皮膚炎のかゆみにつながるケースもあります。シートを使うのは問題ありませんが、小まめな交換が必要です。長時間交換しないと、かゆみが生じたり、ショーツの中がムレたりして、細菌が繁殖しやくなるからです」

 また、気になるにおいは、乾燥した外陰部の皮膚に尿の成分がしみこんだせいだという。

「特に入浴後に保湿ケアを心がけると、におい対策にもなります。『腟まわり』の皮膚に油分を補って保護膜をつくると、尿をはじいて、皮膚にしみこまなくなりますよ」

 腟は女性のシンボル。月経血が出る場所であり、赤ちゃんが生まれるときには産道となる。そして、いちばん大切な役割は、愛する人とのコミョニケーションを担う場所だということ。言葉でやり取りする<上の口>と同様に、スキンシップによって安心感や快感を得る<下の口>はとても大切な場所なのだ。

「『腟まわり』のケアは、いわば顔のケアと同じ。唇が乾燥したときにリップクリームを塗るのと同じと考えるといいですね。腟が乾燥しているとセックスにも影響します。日本では長年、『腟まわり』やセックスについて語るのはタブーという文化がありましたが、そもそもセックスで快感を得ることは恥ずかしいことではありません。男女のコミュニケーションでとても大切なことではないでしょうか。『腟まわり』のケアは、自分自身を慈しむことにもつながっていきます」

 ステイホームで時間がある今こそ、日ごろのケアをぜひ見直してほしい。(取材・文/スローマリッジ取材班 大石久恵)

<取材した医師>
松峯寿美(まつみね・ ひさみ)/東峯婦人クリニック理事長。医学博士。日本産婦人科学会専門医。1970年、東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学病院に“不妊外来”を創設。1980年より東京・木場に東峯婦人クリニックを開業し、女性専門外来の先駆けとなる。思春期から妊娠・出産、更年期、老年期まで。女性の健康管理を見守り、サポートし続けている。