処遇が難しいものの一つがペット。里親を決めたり、親族や友人に世話を依頼したりするケースもあるが、口約束ではなく、金銭の問題も含めてきちんと契約しておかないと、いざという時にトラブルになる可能性がある。

 形見分けの品、譲る相手、パスワードなど、必要な事項はエンディングノートに書き出しておくとよい。家族や近親者、もしくは死後事務を託された人は、そこに書かれた故人の意向に沿って処理を進めることになる。日記をはじめ、遺品を家族にも他人にも見られたくないなら、死後事務委任契約を結び、業者に処分を委託するのも選択肢の一つだ。

■「万が一」に備える制度

 まだまだ元気だけれど、健康な状態が続くのか、認知症にならないか、など将来に不安を抱えている人は多いはず。特に、独身、子どもがいない、身近に親戚がいないなど、いざというときに頼れる親族がいない場合、万が一のことがあったときの不安は大きい。

 そうしたケースで利用できる仕組みを紹介しよう。まず、身体が不自由になって銀行からお金を引き出せなくなった場合に利用できる制度が「財産管理等委任契約」だ。「任意代理契約」とも呼ばれるもので、親族、知人、弁護士、司法書士など、委任する相手に規程はなく、当事者同士で委任内容が決められる。

 一方、将来、認知症になったときの備えとして利用できるのが、金銭の管理や契約などを任せる「成年後見制度」。認知症を発症した場合に、家庭裁判所が選ぶ「法定後見」と、認知能力のあるうちに手続きをし、自ら人を特定する「任意後見」がある。「財産管理等委任契約」と「任意後見」をセットにしたうえで、月1、2回の定期連絡をする「見守り契約」を結べば、一人暮らしの場合は貴重なライフラインとなるだろう。

■友人、知人に依頼する場合も、報酬は忘れずに

 死後に発生する諸々の手続きを任せるのが「死後事務委任契約」だ。死後には、死亡届の提出に始まり、葬儀の手配、遺品整理や納骨、さらには病院介護施設の退院・退所手続き、年金や介護保険の資格抹消手続き、公共サービスなどの解約・精算など、さまざまな事務が発生する。クレジットカードやサブスクリプションの解約、メールアカウントの削除手続きも必要だ。年会費がかかるものや有料のオプションをつけている場合、解約をしないとそのまま払い続けることになる。死後事務委任契約では、こうした諸々の依頼事項を細かく設定して依頼する。

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「万が一」に備える制度はこれ!