内村光良
内村光良

 理想の上司ランキング、男性部門で5年連続第1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)は出版前に重版が決まるなど、注目を集めている。関係者への取材を重ねた著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。

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第6回目のテーマは「無欲」。

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 今回、20人にも及ぶ関係者への取材をもとに、リーダー内村のタイプを筆者なりに分析すると、彼は典型的な「尽くしたくなる」リーダーである。なぜ、内村は尽くしたい気持ちにさせるのだろうか。

 その理由について、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)で総合演出を務める古立善之氏がこんなヒントをくれた。

「内村さんは、ある番組が人気になったり、視聴率がよかったり、そういった成果から生まれる“果実”を『自分が狩ってやる』という気持ちが一切ない人です。自分がMCを務める番組が大成功したとして、その成功を自分の芸歴や収入、評価などといったものに、還元したいとか、してほしい気持ちがまったくないんだと思うんです。単純に番組に関わっている大勢の人たちと、よりおもしろい番組をつくろうという以外には、興味がない」
 
 この「(成果から生まれる)果実」という言葉は、内村のリーダー像をひもとくヒントに見受けられる。
 
 ビジネスである以上、売り上げ・予算といった「数字」にこだわるのは当然のこと。達成できなければ、給料や会社の存続にも甚大な影響を与えていく。内村も古立氏も推して知るべし、視聴率というシビアな「数字」に日々、向き合っている。これらの数字はリーダーやチームが目標とすべき、重要な「成果」といえる。
 
 だが往々にして、私たち社会人は、その「成果」の先にある「果実」というものを意識してしまう生き物だ。その仕事で成果をあげた暁には、それがどう自分に還元されるのかをどこかで意識してしまう。むしろそれが働くモチベーションであるという人も少なくないだろう。
 
 あながち悪いことでもない。リーダーから発せられる上昇への強い欲求が、チームを引っ張っていくエネルギーとなりえる側面もある。出世、お金、名誉は、分かりやすく誰しもの欲を刺激する甘い「果実」だ。
 
 しかし、リーダーが(内面に抱えるかどうかは別として)「果実を狩ってやろう」という姿勢を強く外に出してしまうことは、チームモチベーションを高めるという点においては避けるべき行為ではないか。

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「内村さんを笑わせたい」