どんな土地に生まれるか、どんな教育レベルの親のもとに生まれるか、どんな時代に生まれるか、どんな人間環境で育つのか、そういったあらゆる関係性が物心つかない頃から私たちの言動や人生の選択に影響を与えていきます。それらを「自己責任」の一言で片づけるのは、想像力の欠如以外の何ものでもないと、私は考えます。

 こう想像力を働かせることはできないでしょうか。

「では、自分が仮に路上生活者の下に生まれたとしたら、自分はそれでも立派な塾に通い、有名大学に進学して、勉学に専念することができたかどうか」と。

 ある人物が大学に進学して成功している。その背後には、自分自身の努力以上に、その人の教育にお金をかける価値を見いだした親の存在があるのです。「勉強などしても無駄だ。それより高校を出たら働け」と強制せず、「あなたの努力は報われる。進みたい学校に進みなさい」と背中を押して見守ってくれる家庭に生まれたという幸運が、多くの場合根底を成しているのです。現在日本にはびこる「自己責任論」を、私たちはもう一度よく考え直す時期に来ているのではないでしょうか。