一方、近年の山中浩史、鵜久森淳志らに続き、後者の系譜を継ぐのが、いずれも楽天戦力外となった今野であり、近藤だ。特に近藤は「自分の持ち味」という高速シュートを武器に、ここまでヤクルト再生工場史上に残りそうな働きを見せていたが、5月26日の日本ハム戦(神宮) で1球投げたところで緊急降板。 翌27日に登録を抹消されてしまった。

 昨年オフに一度は育成契約でヤクルト入りしたその近藤は、3月に支配下契約を結んだ際に「(戦力外通告を受けて)1回死んだ身。そこを拾ってもらってるんで」と話していた。これはここ数年のヤクルト再生工場の選手たちの多くが口にしてきた言葉でもある。そこにはかつての田畑と同じように「見返してやろう」という気持ちもあるはずで、その思いが“再生”の原動力の1つになっているのは間違いない。

 今シーズンでいえば、そんな再生工場の系譜を継ぐ男たちのほとんどが「パリコレ」。彼らが古巣との対戦にどんな思いで臨み、どんなパフォーマンスを見せるのか。交流戦においては、それも見どころの1つになりそうだ。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。