現在は登録者の数よりも質が問われるようになっています。どんな「人」が登録しているのか、という点の方が「何人が登録しているのか」よりも重要なのです。なんとなく登録している人を10万人抱えているチャンネルよりも、熱心なファンを100人持っているチャンネルの方が価値があります。そういう意味で、最新動画を必ず見る人が多いチャンネルの方が今のYouTubeのアルゴリズムでは有利です。物販をした場合も、前者よりも後者の方が売り上げをあげやすいのです。イベントの告知やライブ配信をする際も、数は多くなくとも熱心なファンだけが集まっていれば、効率的な集客ができます。そのため、むやみにチャンネルの登録者を増やさず、濃いファンだけを確実に集めて育成する、という戦略が現状のYouTubeで王道の戦略になります。「あえて登録者数を増やさない」「ターゲット層以外にリーチしないようにする」という動画の作り方が重要で、むやみに動画をバズらせたり無意味なヒットを出さないようにコントロールする必要があるのです。

 多くの企業や視聴者が、「チャンネル登録者数の多いチャンネル」を好む傾向があります。企業案件を依頼するときも、YouTubeのコンサルを依頼するときも、見栄えが良いために「チャンネル登録者数」というわかりやすい指標でチャンネルの価値を図ろうとします。また、大きくビジネスを展開したいからといって、「世界中で再生されるチャンネル」を作り出そうとします。そうではなく、「アクティブな視聴者をどのくらい抱えているか」という視点が重要です。

 極論を言えば、「世界中で再生されるチャンネル」よりも「愛知県だけで再生されているチャンネル」の方がメディアとしての価値が高い場合も少なくありません。例えば愛知県にある飲食店を、世界各地に1億人の登録者に告知をしたとして、何パーセントの人が現地に遊びに来るでしょうか。この場合は、「愛知県だけで再生されるチャンネル」の方が集客の効率は良いはずです。

 YouTubeでは、規模だけを追わずに、特化型と呼ばれるニッチな層を集めた方が、二次的な展開がしやすいのです。もちろん「世界で配信するサービス」を宣伝したい場合は、「世界各地の1億人」に告知するのもありですが、コンバージョン率(反応する割合)が期待どおりになるかは不明です。登録している人々の熱心さが数値化できないからです(登録者数が多いから登録する人も少なからずいます)。YouTubeのアルゴリズムも、登録者の多いチャンネルを優遇することはありません。ファンを抱えるチャンネルを優遇しています。これは、数だけを集めるのではなく、質が問われているからです。以上が、「登録者を買う」という馬鹿げた発想を、成功しているYouTuberが絶対にしない理由です。