離婚後の子どもの心理や海外の制度に詳しい大正大学の青木聡・心理社会学部教授は「弱き者や、より声の小さい者をしっかり皆でサポートする、とのスタンスでこの問題を考えることが重要です」と指摘する。

 日本では裁判で争った場合でも家庭裁判所の調査官が子どもに1,2回会う程度で、面会交流や養育費の取り決めも義務化されていない。一方、例えばノルウェーでは、離婚を希望する場合まずは別居して面会交流を行い、養育費も毎月支払えているか1年間確認する。その上できちんと行えていれば離婚が可能となる仕組みになっていると青木教授は説明する。

「子どものために親がちゃんと配慮できるか事前にチェックしているんです。片方の親と引き離されたり悪口を聞かされ続けたりすると、自己肯定感が下がり、人間関係能力の低下やアイデンティティー形成に問題が出てくるということが多くの先行研究から分かっています。それらを防ぐための政策がとられているのです」(青木教授)

 共同親権/養育を採用している国々では、DVや虐待問題にどのように対応しているのだろうか。

「日本で争点となる『連れ去り』も違法化している国がほとんどです。『同意なき連れ去り別居』が子どもの未来に与える影響を深く考慮している面と、欧米などではDVや虐待に対して厳しい制度や介入の仕組みができているため厳格に対処できる、との面があると思います。DV対策をみると、日本は被害者を逃がすのに対して欧米では加害者を逮捕して罰するという点が大きく違います。『子どもの未来への想像力』が乏しく、DVなどを緻密に評価する専門家・機関が少ないことが日本の大きな問題で、対策は急務です。最も弱い者を支援するとの視点に立てば共同養育の考え方になっていくと思いますし、その中でDVや虐待など明らかに犯罪的な行為には厳しく対応していく。その上で離婚後の子育てについての親教育は大事ですし、養育計画など大人としての取り組みを行う。子どもをしっかりと育てていく、そこは離婚しようがしまいが最低限必要な親の配慮です」

 親間の葛藤を下げ、子の養育に双方が責任を持つことができるようにするためには、今後どのような法や制度を構築していけばいいのだろうか。(藤岡敦子)