鏡:僕は全然実感がありません。40年くらいこの世界にいるんですけど、ずっと占いは「ブームだ」と言われているような気もします。人間って根底的なところでいつも「この世界ってどうなるんだろう」「このわけわからない世界でどう生きよう」「明日どうしよう」って無限ループのように考えている。だから占いが必要とされ続けているのかもしれないなと思います。

中村:僕にとって、このコロナ禍の占いブームは計算外でした。連載中にコロナが突然発生して、それを場面に取り入れましたが、先のことがわかればいいのに、という小説のテーマが、そのままコロナに対しても当てはまってしまった。僕は、占いも宗教も、人がそれを必要としないくらいに強ければ、そのほうがいいとは思うんですよ。だけど、人類は絶対にそうはならない。古来からずっと、人は宗教を求め、占いを求める。だからこそ、鏡さんのような良心的な占い師は非常に重要だと感じています。鏡さんのような占い師が多ければ、悪徳な占い師に引っかかる確率も減るわけですから。

鏡:ありがとうございます。占いは迷信。でも、一概にそうとも言えない。本当にこの世界がどうなっているのかはわからないんだけど、サンプルを占星術の中にみることができる。先が見えない時代だからこそ、そういう二重視点を持つ占い師や人々が、多く出てきてくれたらいいなって思っています。

中村:人は絶望すると、視野が狭くなります。でも小説を読むと、自然と視野が広がることがある。読書には絶望を遠ざける要素があると思うんですね。このコロナ禍では、特にそういうものが必要だとも感じます。読み終わったときに少しでも視野が広がって、気持ちが高揚するような小説。『カード師』は、そんな作品を目指したつもりです。

(構成/MARU)