安倍前首相と菅首相(c)朝日新聞社
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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、コロナ禍で東京五輪開催に突き進む状況下、政治家に必要な資質について考えた。

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 私の会社には今、従業員が20人いる。25年間続いている女性向けトイの通信販売業に加え、大阪と東京に実店舗がそれぞれある。四半世紀、細々とではあるけれど会社を経営してきた。

 思えば去年の今ごろは忙しかった。毎日のように印鑑を押していた。緊急事態宣言で店舗を閉じなくてはならなくなったため、助成金の申請や融資の申し込みの申請書類に追われたのだ。デスクワークのスタッフは全員テレワークにし、すると途端に広いオフィスが必要なくなり(というか家賃が重くなり)、二つあった事務所の一つを解約したりなどでバタバタとしていた。不安に押しつぶされそうになりながら、場を維持し、整えるための作業に追われていた。

 去年の5月を思うと、今は……なんて暇なのだろう。何も、することがない。私のお店は「要請」という名で強制的に閉ざされた。東京都は休業要請に協力した店舗には最大34万円の協力金を支給すると4月の段階で発表はしたが、いまだに申請方法は公開されていない。政府は百貨店等に出店しているテナントには1日2万円の協力金が出ると発表したが、緊急事態宣言がずるずる延びそうな今、具体的なことは一切わからない。腹が立つのは大阪だ。第一回目の緊急事態宣言下では、大阪に本社のない店舗に休業要請協力金は出なかった。大阪で店舗を持つ東京の会社なんて山ほどあるだろうに……。さすがに批判があったのか厳しい条件付きで出す方向にはなったが、今回の休業要請に関しては「6月にならないと分からない」と、大阪府の電話窓口(電話がつながるのに1時間かかった)の人に言われた。カネには細かいがウイルスにはおおざっぱな維新政治が、大阪の今の惨状を象徴しているんじゃないかと、大阪のスタッフから「熱が出た」「頭痛がする」「のどが痛い」などと報告がある度に、怒りがこみ上げてくる。そういえば去年の今ごろは、1人一律10万円の給付が始まり、そうとう安堵したものだけれども、いったいなぜ今年はその手の話が一切出てこないのだろう。

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北原みのり

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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