今や国民的番組であり、現在の内村を象徴する番組でもある『世界の果てまでイッテ Q!』(日本テレビ)で総合演出を務める、古立善之氏もにじみだすそれをたびたび感じるという。

「若い人がそれなりに体を張って頑張ったVTRを見ると、やっぱり内村さん自身が、俺もなんかやんなきゃ、みたいな表情やしぐさをみせる。そりゃ出演メンバーやスタッフに波及しますよね。それは口ではあんまりは言わないんです。背中で語る、とよくみんなで言うんですけど」
 
 やはりこの点について「背中を見せる」内村のやり方は、リーダーたちが習得すべき行動だと思われる。

 チームを動かすにあたり、この「背中が見えること」は非常に重要だ。チームの前に立つリーダーの背中がはっきりと見えてくると、たとえ言葉で語らずとも、その姿を見て、部下たちが自ら学び、考え、行動していく“自発的チーム”を生み出すことができる。まさにそれが、「チームを行動させる」リーダーだと考える。

 今回の取材を通して、多くの関係者の言葉の節々から感じたのは、「内村さんのためなら……」「内村さんに笑ってもらいたいから……」という、番組や舞台におけるリーダー内村へのチームメンバーの「献身マインド」のようなものが非常に強いことだ。
 
 注目すべきは、それが決して「強制的」なものではなく、それぞれが「自発的」に持っているものであることだ。取りも直さず、それは内村自身が、周囲の仲間が「尽くしたくなる」リーダー要素を持っていることを意味する。
 
 多くのリーダー論において、「チームのモチベーション創造」は永遠のテーマであろう。そして組織において、後輩や部下から「尽くしたくなる存在」になることは、このモチベーション創造において“究極の理想形”といえる。

●畑中翔太(はたなか・しょうた)
博報堂ケトルクリエイティブディレクター。アクティベーション領域を軸に手段とアプローチを選ばないプランニングで、「人を動かす」統合キャンペーンを数多く手掛ける。 これまでに国内外の150以上のアワードを受賞。Cannes Lions 2018 Direct部門審査員。2018年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリスト。