この商品のもう一つの特徴は、もしツアー中にコロナに感染した場合、「一時金」として3万円が支払われる保険がセットになっていることだ。ツアー期間中に旅行者、または同行者が発症した場合と、旅行が終了した日から14日以内に旅行者本人が発症した場合に支払われる。ただし、旅行代金は戻ってこない。

「取消料の規定に基づき、ツアー参加後のコロナの発症については、旅行代金の返金はなく、コロナ一時金の3万円のみになります」(同)

 例えば、18泊19日のプラン(450万円)で1日目に感染が発覚して競技が観戦できなかったとしても、ツアー代金は返金されない。2名1室のプランなので、基本的に同室者も濃厚接触者となり、最悪の場合、ペアで900万円近く損をする可能性もある。予約枠の人数や販売状況も確認したが、「公表していない」(同)という。

 JTBだけではない。旅行代理店の東武トップツアーズでは、24日から公式観戦ツアーの「抽選」の受け付けを始めている。

「(開幕まで)日にちが迫っていますので、抽選の受け付けは開始しないと間に合わない状況です。ただ、有観客での開催が正式に決定した後に抽選を行います」(同社広報担当者)

 コロナ禍での五輪開催についてはこうコメントした。

「(組織委員会やIOCに対して)感染状況や医療環境を踏まえた判断を優先願いたいと考えます。開催ありきではなく、開催される場合にはスポンサー企業として大会の運営を支援します」(同)

 JTB、東武トップツアーズともに東京五輪の旅行部門における公式スポンサーだ。公式観戦ツアーは、東京五輪・パラリンピックのオフィシャルパートナーのみが販売可能となっている。残るもう1社のオフィシャルパートナーである、KNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト・クラブツーリズム)は、現在販売を見合わせている。

「5月31日までは緊急事態宣言が出ているという状況を踏まえ、宣言が明ければ6月1日にツアーの告知、8日から発売を予定しております。仮に宣言が延長された場合には、別途スケジュールを再検討します」(同社広報担当者)

 4月末、組織委員会の橋本聖子会長は「無観客という覚悟は持っている」と会見で述べている。にもかかわらず、旅行会社は“観客ありき”で高額な観戦ツアーの販売をスタートした。それも「感染補償」までセットにして……。これが「感染ツアー」になってしまったら元も子もない。(取材・文=AERA dot.編集部・岩下明日香)