一方の投手ではマルティネス(ソフトバンク)の安定感が目立つ。初来日となった2018年には日本ハムで二桁勝利をマーク。その後は故障もあって成績を落としてはいたものの、退団したムーアの穴を埋めたいソフトバンクがキャンプイン直前に獲得した。今シーズン初登板となった5月1日のオリックス戦では6回を無失点と好投を見せ、移籍後初勝利をマーク。8日の西武戦は味方の援護がなく負け投手となったものの7回2失点と試合を作り、15日の日本ハム戦では5回2失点で2勝目を挙げた。

 ストレートはコンスタントに150キロを超え、故障の影響は全く感じられない。これだけのスピードがありながら制球力も高く、カットボール、ツーシームの小さく動く変化球も非常に効果的だ。投手陣の層は厚いものの、故障者が多いチーム事情もあるだけに、このタイミングで一軍に合流したことは非常にありがたい。順調にいけば3年ぶりとなる二桁勝利も期待できるだろう。

 投手でもう1人、今後に期待ができそうなのが首位を走る阪神に合流したアルカンタラだ。デビュー戦となった5月16日の巨人戦では初登板初勝利をマーク。6回5失点という数字だけ見ると物足りなく感じるかもしれないが、失点を許した2回と6回以外の4イニングは全て三者凡退に抑え込んでおり、昨年韓国で20勝をマークした実力の片鱗は十分に見せていた。

 150キロを超えるストレートは数字以上に威力を感じるボールで、コントロールも非常に安定している。デビュー戦は少し慎重になって外一辺倒の配球となり、変化球も甘く入るボールが目立ったが、日本の野球についての理解が進んでくれば更に安定感がアップしてくる可能性は高い。16年ぶりのリーグ優勝を目指すチームにとって、大きな上積みとなりそうだ。

 一方でロハス(阪神)、ガーバー(中日)、ディクソン(楽天)、R.ロドリゲス(日本ハム)など苦しんでいる選手も少なくないが、実戦を重ねて調子を上げてくる選手もまだまだ出てくるはずである。例年以上にシーズン途中の新外国人の補強が難しい状況だけに、1人でも多くの選手が実力をいかんなく発揮してくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら