巨人・坂本勇人 (c)朝日新聞社
巨人・坂本勇人 (c)朝日新聞社

 巨人坂本勇人が右手母指(親指)末節骨骨折で10日に登録抹消されてから、およそ2週間が経つ。今月9日のヤクルト戦(東京ドーム)で5回に四球で出塁し、捕手の牽制球にヘッドスライディングで一塁に戻った際に負傷した。1軍復帰に1カ月はかかると見られ、チームは攻守の大黒柱を欠いた戦いを強いられている。

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 坂本が離脱以降、遊撃のスタメンは吉川尚輝が5試合、若林晃弘、廣岡大志が共に2試合出場している。吉川は26歳で若林は27歳。坂本も32歳と若くはない。守備の負担を減らすためにも吉川、若林は遊撃で「坂本の後継者」としての期待も込められて起用されているが、まだまだ及ばないのが現実だ。

「吉川は守備範囲で言えば球界屈指の遊撃になれる可能性を秘めているが、送球に不安を抱えて粗さも目立つ。若林は内外野守れるユーテリティープレイヤーだが、遊撃を託すには球際の強さが物足りないし安定感に欠ける。廣岡もスケールの大きい選手だけど、完成度で言えばまだまだ。3人に比べるとまだまだ坂本の方が上だし、遊撃で守ってもらわなければ困る状況ですね」(スポーツ紙デスク)

 能力を考えれば吉川が遊撃のレギュラーをつかまなければいけないだろう。ただ、首脳陣にはなかなかアピールできていない。16日の阪神戦(東京ドーム)では3回にマルテの打球を一塁に悪送球する適時失策。4回も中野拓夢の打球処理が遅れて内野安打を許すなど拙守が目立った。次のカードの広島戦(東京ドーム)から二塁に回り、二塁の若林が入れ替わる形で遊撃に入った。

 大学時代は遊撃が本職だった吉川だが、プロ入団以降は二塁を守っている。二遊間を守った経験がある球団OBは「吉川に同情するわけではないのですが、二塁と遊撃は全く違う動きなので、入れ替わると対応が難しいんですよね。プロ5年目でほとんど二塁を守ってきたので、遊撃での勘が鈍っている部分もある。肩が強いわけだし、送球も言うほど不安定なわけではない。もう少し長い目で見て判断してもいいかなと思います」と期待を寄せる。

 遊撃は守備の負担が大きいため、名遊撃手たちも年齢を重ねると他のポジションにコンバートされることが珍しくない。元ヤクルトの池山隆寛は宮本慎也の加入で三塁に回り、宮本も08年シーズン途中に三塁にコンバートされた。西武で80年代から90年代前半にかけて黄金時代を牽引した石毛宏典も遊撃でゴールデングラブ賞を6度獲得したが、膝の故障もあり、87年に三塁に回る。三塁でもゴールデングラブ賞4度とコンバートは成功した。

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