頭頸部がんでは、手術で声帯が傷ついたり、顔の形に変化があったりすると、特に著名な人の場合は仕事に支障が出やすいでしょう。声や見た目に影響が出ないよう、放射線治療を選択する場合も増えているようです。

 放射線治療にも副作用はあります。がん以外の正常組織に放射線が当たることで、その組織に悪影響が出るためです。治療中や直後に出る急性期の副作用と、数カ月から数年後に出る晩期の副作用があります。

 急性期では、皮膚に炎症が起きやすくなります。また、照射した部位によって症状も異なります。例えば前立腺がんでは直腸に影響が出たり、食道がんや肺がんでは心臓や正常な肺に影響を及ぼしたりします。

「2方向から放射線を当てるかつての方法は副作用が出やすかったのですが、多方向からの照射法が普及している現在、副作用は少なくなっています。大規模な病院で導入されている『強度変調放射線治療(IMRT)』では、さらに正常組織への照射が抑えられ、合併症が起こる頻度は著しく低減しています」(茂松医師)

 また、骨髄に広く照射されると、白血球が減少して免疫抑制が起こり、感染症にかかりやすくなることがあります。

「部分的に照射する乳がんや前立腺がん、頭頸部がんなどの一般的な放射線治療では、免疫抑制が起こることはほとんどありません」(同)

 放射線治療を実施している病院は、全国で約800施設あります。日本放射線腫瘍学会の認定施設であれば、安全で高精度の放射線治療ができる条件を満たしていることになります。学会のホームページでは、病院が実施している放射線治療の内容を確認することもできます。

「根治目的で放射線治療を受けるなら、その病院が実施している放射線治療の内容を確認するといいでしょう」(同) 

 がんの種類や病期によっては、手術か放射線治療かを迷うケースもあります。

「迷った場合は、外科医だけではなく、放射線治療医からも説明を受けたうえで選択することをおすすめします」(同)

【取材した医師】
慶應義塾大学病院放射線治療科教授 茂松直之医師

(文/中寺暁子)

『手術数でわかる いい病院2021』より