案里氏の150万円のタンス預金はあり得るだろうが、克行被告が用意したという2900万円については自民党内でも憶測を呼んだ。克行被告の元秘書はこう証言する。

「克行被告は、とても細かい性格です。1円のカネでも納得しないと支出を許しません。裁判では自宅金庫に2900万円を保管していたと証言していたが、絶対ないと思う。もしあれば検察は、裁判で金庫の写真など証拠として出しているはず。銀行口座にも、そんな大きなカネはなかったんじゃないか。買収のカネは、どういう形かは別にして、自民党から出ているとしか思えませんよ」

 自民党は以前から克行被告の事件で資料が検察に押収されているので、1億5千万円の使途が報告ができないとしていた。だが、克行被告の判決は6月18日に言い渡される予定だ。裁判が終わり押収品の返還があれば、その言い訳も通用しない。元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士はこう指摘する。

「克行被告、案里氏の裁判を細かく見てゆくと、問題の2900万円すべてか、どうかは別にして、自民党からの1億5千万円が含まれていたのはまず間違いない。すでに自民党や克行被告が1億5千万円の支出を認めているので、これは表のカネだ。二階氏か甘利氏か、もしくは当時、自民党総裁だった安倍晋三前首相なのか。この3人うちの誰かが指示しないと河井夫妻には大金が渡ることはなかったはず。自民党本部は買収に使われることを知っていて1億5千万円を出した可能性もある」

 自民党の閣僚経験者も1億5千万円問題の危険性についてこう危惧する。

「二階幹事長、岸田元政調会長、甘利元選対委員長と重鎮たちが言い争うのは、それだけ自民党にとって克行被告の1億5千万円がヤバイという認めているようなもの。現在の総裁は菅首相なので、ビシッと言えばいい。しかし、その菅首相は当時、官房長官として先頭に立って案里氏の応援で広島入りし、パンケーキまで一緒に食べた仲。知らん顔するしかない。コロナで支持率低下の菅政権に1億5千万円の問題が再燃したら、もう終わりだろうね」
 
 

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官邸でも裸の王様の菅首相