一方の野手で二軍に置いておくにはもったいない活躍を見せているのが石川慎吾(巨人)だ。2016年のシーズンオフに日本ハムからトレードで移籍し、翌2017年には自己最多となる99試合に出場して5本塁打をマーク。その後も外野のバックアップ要員として存在感を見せていたが、今年は梶谷隆幸が新加入しウィーラーが好調を維持していることもあってなかなか一軍から声がかからない状況が続いている。

 しかし二軍では4割近い打率をマーク。5月18日のDeNA戦では2本塁打を放つなど格の違いを見せている。パンチ力のある右打者は貴重なだけに巨人も簡単には放出しないと思われるが、原辰徳監督は積極的に血の入れ替えを行うタイプだけに、交換相手によってはトレードも十分に考えらえる。長打力不足に悩む中日や、鈴木誠也がオフにメジャーへ移籍する可能性のある広島などにとっては非常に魅力的な人材と言える。

 選手層の厚いソフトバンクでもったいない存在となっているのが内野手の川瀬晃だ。昨年は自己最多となる70試合に出場したが、今年は今宮健太が復帰し同じタイプの牧原大成や高田知季の存在もあって一軍昇格を果たすことができていない。ただ二軍ではここまで3割近い打率を残しており、課題と言われていた打撃は確実に進歩が見られる。セカンド、ショートどちらも難なくこなす器用さがあり、脚力も申し分ない。このまま二軍暮らしが続くようであれば、二遊間が手薄な西武や日本ハムなどは獲得を検討しても面白いだろう。

 昨年オフには原監督がトレード期間を1年中にすることを提言しており、出場機会のない選手の移籍を活発にするための現役ドラフトも検討されている。冒頭で触れた選手たちのように、移籍によって実力が発揮されるケースもあることは確かであり、そういう意味でも今後積極的なトレードが増えていくことを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら