無人販売がうまくいかなければ「また店員を置けばいい」と思って始めたというが、好調のまま店舗を増やしていった。現在、工場と併設している入間店と下藤沢店は有人だが、その他はすべて無人だ。

 餃子の無人販売が好調な理由について、『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』を監修する、東京大学大学院経済学研究科の阿部誠教授はこう推測する。

「行動経済学に『返報性の原理』というのがあり、モノを受け取るなど施しを受けたら、それに対して見合ったお返しをしようとする心理が働きます。人として信じてくれているのだから、それに応えてちゃんと払いたいという気持ちにさせます。さらに、単なるマネーボックスを置くのではなくお賽銭箱にしていることで、エンターテインメント的に話題になって、多くの客に利用されているのでしょう」

 無人とはいえ、各店舗には防犯カメラが設置されている。カメラは設置しているだけでも盗難防止に効果があると、阿部教授は言う。

「コーヒーを1杯飲んだら100円を入れてもらうという実験があります。その結果、人の目が睨んでいるようなポスターを貼って置いただけで、ポスターがない場合より支払い率が高まりました。見られているという気持ちにさせられると、悪いことがしづらくなります。防犯カメラなら記録にも残りますから、さらに効果があります」(阿部教授)

 餃子の雪松の店舗は料金箱にお金を入れる形式なのでおつりが出ず、店内に両替機も設置されていない。利用したことがあるという編集部員は、冷凍庫から餃子を取り出してから財布に1000円札がないのに気づき、慌てて餃子を元に戻して店を出たことがあった。カメラが見ている前で不審な行動をとって「ヘンに疑われないだろうかとびくびくした」とか。

「そういう方はよくいますよ」と前出の高野内さん。ちゃんと防犯カメラでも確認済みのようだ。商品の味も販売方法も、昔ながらのやり方が受けているのかもしれない。

(AERA dot.編集部・岩下明日香)