私生活や健康状態は謎が多かった田村さんだが、岡崎さんはこう話す。

「田村さんは自分でズカズカと前には出ずに、物静かな人です。自分の家族のことはめったにしゃべらない人でしたね。ちょっとシャイで、照れ屋だし、そしてセクシーだから女性にはモテました。ランニングや筋トレなんか何もしないのにスラっとしてかっこよかった。それが最後のドラマのときには、自分の姿を見て『そろそろ限界かな』と言ったそうです。それからは表舞台に出たくなかったのかもしれません」

 4月3日に亡くなってから、マスコミで報じられるまでには1カ月半近く時間がたっていた。弟の亮さんは公式サイトでこうコメントを発表した。

「葬儀も派手にせず静かに見送ってくれと家族に言っていたそうです。生前、兄に関わって下さった方々に、私からも心より厚く御礼申し上げます」

 これに対して、岡崎さんは「田村さんらしい」と語る。

「本来なら青山葬儀場で何万人も集めて告別式をやってもいいくらいのスターですよ。だけど、渡哲也は『自分の訃報は一切、周囲に知らせるな。葬儀も身内だけ』と遺言を残したし、梅宮辰夫も近親者のみの葬儀にした。田村さんはそういう役者たちの姿を見てきたし、今はコロナ禍だから余計に、自分のために人を集めるのが嫌だったんじゃないかな」

 ジェームズ・ディーンに憧れた名俳優は、最期までダンディーな姿で旅立って行った。(取材・文=AERAdot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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