ほかに、明るいところで見えにくくなる、ものが二重、三重にダブって見えるなどの症状がみられることもある。

 白内障は、「急いで治療をしなければ手遅れになる」という緊急性の高い疾患ではない。一方、中高年にみられる目の病気には、緑内障や加齢黄斑変性など、放置すると視力の低下が進み、失明する恐れがあるため早期治療が必要な病気もある。

「眼科を受診する場合、『なんとなく見えにくい』『見え方がおかしい』という大雑把な症状として訴える方がほとんどで、白内障とほかの病気で『明らかに異なる見えにくさ』があるわけではありません。専門医がみればそれぞれの病気特有の所見がありますが、患者さん自身が自覚症状から病気を判断するのは難しいでしょう」(大鹿医師)

 見えにくさを感じたら、早めに眼科を受診し、早急に治療が必要な病気かそうでないかを診断してもらうことが望ましい。

 視力は、脳にさまざまな情報や刺激を与えており、「脳に送られる情報の80%が目を通して入る」とも言われる。見えにくさは生活に支障を来すだけでなく、記憶や理解、学習などの認知機能にも影響を及ぼす可能性が考えられており、近年では視力の低下と認知機能の関係について、多くの研究が進められている。

■視力低下は生活や認知機能に影響

 筑波大学では、白内障の手術を受けた55~93歳の88人を対象とし、白内障の手術前と手術後の「見えやすさ」と「認知機能(MMSE)」の変化について調査した。その結果、手術後の視力改善により、認知機能やうつ症状が改善し、生活の質(QOL)が向上したという結果が得られた。大鹿医師は、視力の低下と認知機能の低下の関係について、こう話す。

「視力が低下して目から入る情報が減ると、脳への刺激が減少し、その状態が長く続くことで脳の働きが低下することが考えられます。見えにくくなることで家に閉じこもりがちになったり、人とのコミュニケーションが減ったりすることも、認知機能の低下につながる可能性があるでしょう」

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