有隅昭二球審が「アウト!」とコールした直後、マートンが興奮してヤクルトベンチに向かって何事か叫んだのを合図に両軍ナインが飛び出し、一触即発の事態となったが、乱闘は寸前回避された。「(激昂するマートンに)“来たな”と思ったが、(登録の)捕手が2人しかいないし、あとのことを考えると、熱くなっても仕方ないと思っていた」と西田が冷静に対応した結果だった。

 だが、真中満監督は「ベース(上)にいるならともかく、(一角を)空けている状況で、あのタックルはない。ウチに限らず、選手生命にも関わる可能性がある。マートンの本塁でのクロスプレーには、2013年に2度の因縁がある」と通算3度目のトラブルを問題視。その後、7月の12球団監督会議でも自ら問題提起したことがきっかけとなり、翌年からコリジョンルールが導入された。

 くしくもマートンは、高年俸と長打力不足がネックとなり、新ルールと入れ違いで阪神を退団。“必殺技”が禁止される前に日本を去ったのは、いい潮時だった?(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら