この病気の厄介な点は、再発リスクの高さだ。冒頭で挙げた有名人も、再発に苦しめられたケースが多い。嵐の相葉雅紀は、2002年に右肺で発症。その後11年に左肺で発症して緊急入院し、手術をしていた。

 佐藤健も出演番組内で、「僕、気胸2回やってます。18歳で1回目、20歳で2回目。手術はしてないけど、まだブラはあって」と再発の苦労を語った。20歳の再発時には、医師から「肺がしぼんで半分になっている」と診断されたといい、「次にやったら手術かなと考えていた。それからは1回もなっていないので、多分大丈夫」と話していた。

 大亀医師は、「一般的には、手術を行わない場合の再発リスクは高いです」と語る。

「気胸患者のうち、30~50%ほどが再発すると言われています。手術以外の治療では、肺の表面の弱い部分そのものが治せるわけではないのです。再発を繰り返すようですと生活に支障が出るので、将来的な予防のために手術を勧めることもあります」

 昨今の新型コロナの蔓延は、気胸の発見の遅れにもつながっているかもしれない。咳や息切れなどの症状は、コロナ患者の症状とも似通っている。

「症状だけ見ても気胸と断定するのは難しいですが、レントゲンで見ればすぐにわかります。あばら骨と肺との間に隙間が見えたら気胸です」

 コロナ禍の影響で、病院での受診を避ける患者が増えているのではないかと懸念する。

「胸が痛いけど家で我慢している“隠れ気胸”も、一定数いるとみています。検査をすれば気胸かどうかがすぐわかるので、気になったら我慢せずに受診していただきたいですね」

 最後に気胸の専門家の立場から、この病気が世間で“イケメン病”と呼ばれていることについてどう思っているのか聞いてみた。

「気胸は風邪などと比べると、どうしても認知度が低いです。“イケメン病”という呼び名が話題になることで周知につながり、『自分も気胸かも』と気づいてもらえることは良いことだと思います。ただ、イケメン病だからといってイケメンばかりがなるかどうかは、よくわからないですね……もちろんルックスとは関係ないですよ」

 イケメンと呼ばれる芸能人の罹患によって世間の認知度が上がった「気胸」。一般人でも発病すれば話題になるのかもしれないが、苦労の方が多そうだ。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)