「とにかく、電話が鳴り止まない。当番になると、携帯電話を持ち帰りますが、夕食をつくる時間もないくらい、ひっきりなしに電話がかかってきます。コロナで過労死するんじゃないかと思うほどです」

 大阪維新の政策で保健所が大幅に削減され、人手不足に陥り、月の残業が100時間を超える保健師も大勢いるという。

「コロナ患者さんやそのご家族も熱が上昇、下がらない。しかし、入院ができないとなるとそのイライラを保健所にぶつけてくる。『はよ入院させろ』『このままでは死ぬ』『家で死ねというのか』などきつい言葉を浴びせられることもあります。しかし、空き病棟がないのでどうにもならない。先日も本来なら重症病棟で治療しなければならない患者さんを空がないので中等症の病床へ送りました。もう無茶苦茶ですよ」

 大阪府下の消防隊員も惨状をこう語る。

「コロナ患者の救急搬送で困るのが、とにかく搬送先がないことです。3~4時間と待たされるのはザラです。酸素投与をするのですが、4月から5月にかけて、その際中に急に悪化する患者さんが多く出ました。変異株が理由なのか、とにかく悪くなるスピードが驚くほど速い。急に呼吸が荒くなって、本当に生命の危機が迫っているような容態になるのです。救急車ですから酸素投与など応急処置しかできません。患者さんのご家族は、オロオロして涙する方もいらっしゃる。思わず、こちらも涙がこぼれそうになります」

 看護師、保健師、消防隊員を取材して3人とも口を揃えるのは、「完全に医療崩壊です」という現状。助かる命が、助からない大阪。

「東京五輪やるよ」という菅首相には過酷な現実を直視してほしい。

(今西憲之 AERAdot.取材班)