私の友人の中には、高校の授業が合わないと感じ、退学までした子がいます。それでも彼女は、大検をとって東大に合格し、その後、自分の好きな研究をしています。

 生まれもった性質により集団行動が苦手だったり、じっとしていられなかったり、ほかにもセンシティブな理由で、不登校になる生徒は存在します。

 それでも、本人の努力や、周りでサポートしてくれる人の存在により、立派な業績を残したり、自分の好きな道へ進めたりした例は数えきれないほどあるわけですから、「学校で勉強しないこと」「集団の中で勉強しないこと」がイコール「よくないこと」とは一概に直結しないわけです。

 ただ、この不登校の是非の話と、今回のゆたぼんの不登校の話は少し違うように思います。

 ツイッター上でひろゆき氏が、「一日に何時間勉強しているのか」という疑問を投げかけたとき、ゆたぼんの父親は、「赤の他人に話す必要はない」と答えました。

 もし、学校に行っていなくとも本当に自分たちの教育に自信があるのなら、こうした質問にも真正面から答えればよいと思うのです。

 それなのに、質問を退けて発言者であるひろゆき氏をけなすという方向に移ってしまうため、ゆたぼんの話は不登校とはズレた騒動になっていってしまうのです。

■YouTubeで東大の問題を解く姿に疑問

 ゆたぼんは高校で習うことをすでに理解できると主張し、「東大の入試も解ける」と、動画をあげています。

 でも、それはYouTubeの中での話なのです。

 極端な話をすれば、問題なんて事前に読んで言葉を丸暗記してしまえば、いくらでも解いているように見せられるわけですし、動画は後からいくらでも編集が可能です。

 動画の中で東大の入試を解いたところで、本当に賢いことの証明にはならないと思うのです。
 
 もし、ゆたぼんがきちんと勉強ができているということを本当に証明したいのであれば、たとえば「やらせ」が不可能な予備校などの公開模試を受けて、高校生レベルの問題にも高得点をとり、そのテスト結果を公開すればいいのではないでしょうか。

 たったそれだけで、彼の不登校やホームスクーリングに対して、否定的な見方をする人は相当数少なくなると思うのですが……。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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