昨年のドラフトでソフトバンクから1位指名された花咲徳栄の井上朋也 (c)朝日新聞社
昨年のドラフトでソフトバンクから1位指名された花咲徳栄の井上朋也 (c)朝日新聞社

 学生野球チームの場合、全国大会で優勝することが目標ではあるが、もう一つ大きな評価ポイントとしてどれだけの選手をプロへ輩出したかという点がある。かつてはPL学園、現在では大阪桐蔭が甲子園大会で勝ちながらプロへも多くの選手を送り出している代表例と言えるが、それ以外にも一大勢力を築いているチームは確かに存在している。今回は近年でプロ選手輩出が目立つ学校をピックアップし、その特徴を探ってみたいと思う。

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 高校野球でここ数年一気に存在感を増してきているのが花咲徳栄(埼玉)だ。その特徴は高校から直接のプロ入りが多いというところ。現在10人のOBがプロに在籍しているが、大学を経由してプロ入りしたのは楠本泰史(DeNA・東北福祉大出身)だけ。2015年からは愛斗(2015年西武4位)、高橋昂也(2016年広島2位)、岡崎大輔(2016年オリックス3位)、西川愛也(2017年西武2位)、清水達也(2017年中日4位)、野村佑希(2018年日本ハム2位)、韮沢雄也(2019年広島4位)、井上朋也(2020年ソフトバンク1位)と6年連続で実に8人もの選手が指名を受けているのだ。

 この6年間で高校から直接プロ入りした人数では大阪桐蔭(大阪)と並ぶ数字である。更に激戦区の埼玉で2015年から5年連続で夏の甲子園に出場し、2017年には全国制覇も成し遂げている。勝ちながら選手を輩出するという意味では、関東でナンバーワンの存在とも言えるだろう。もう一つ目立つのが輩出している選手のバリエーションの豊富さだ。投手、捕手、内野手、外野手全てのポジションの選手がプロ入りしており、若月健矢(オリックス)は守備型のキャッチャー、野村と井上は右のスラッガー、岡崎はリードオフマンとあらゆるタイプの選手が揃っているのだ。

 能力の高い選手が多く入学してきていることは確かだが、これだけ多くの成功事例があるというのはチームの大きな財産であることは間違いない。近年プロ入りした選手が多く、レギュラークラスの経験があるのは若月くらいだが、愛斗、高橋、野村などは今年ブレークの兆しを見せているだけに、今後更に花咲徳栄出身の選手が球界を席巻する可能性は高いだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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西日本で目立つ高校は?