一般に公示して契約が結ばれないとなると、どうやって企業が選ばれたのか。統合幕僚監部の担当者はこう説明する。

「旅行会社がコールセンターなど含めて自治体のワクチン接種業務を受注しているという新聞記事を見て、大手旅行代理店3社に声をかけた。東京の業務は一番安い見積もりを出した日本旅行に決まりました。大阪についても2社が手を上げたが、そこに東武トップツアーズも参加したいと見積もりを出してきた。その結果、東武に決まりました」

 だが、高額な随契となると、公平性や透明性が問われるのは当然だ。先の上脇教授はこう語る。

「変異株が蔓延しているとはいえ、このような状況は以前から続いている。緊急性があったという理由も説得力がないのではないか。計画性が伺えず、後手に回ったツケとして随契をしていいとはならないでしょう。初めからこの企業にやらせようと決まっていた可能性も疑いたくなる。本当に随契が必要だったのか、説明する必要があると思います」

 厚生労働省関係者がこう話す。 

「普通に考えたら、会場の設営なんて、入札でやるはずです。入札が間に合わないほどドタバタになったのは、菅首相と和泉首相補佐官ら側近が唐突、かつワクチン担当の厚労省との事前調整なしに大規模接種センター立ち上げをぶち上げたからです。24日開設という官邸の結論ありきで、防衛省は押し付けられた訳ですから。全国の自治体にワクチンを回すことをとめてまで、政府直営のセンターを作ろうとした理由は、4月の補選3連敗など政権への向かい風を反転攻勢させるべく、政治利用です。変に菅首相のリーダーシップをアピールしようとして、現場を混乱させ、無駄な税金を投入する典型例です」

 防衛省からも「みんな疲弊してしまっている」と声が漏れる。
大規模接種センターで一日1万人ものワクチン接種は本当に可能なのか、東京五輪・パラリンピック開催を目前に控え、ワクチン接種を巡るゴタゴタはいつまで続くのか。
(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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