■プロジェクションマッピングの舞台裏

 インターネット上の情報によると、震災当時、道の駅『大谷海岸』でマンボウは飼育されていなかったようだ。震災後は、食品として直売センターにマンボウが並ぶことはあっても、道の駅の象徴たるマンボウはずっと不在だった。リニューアルに合わせて、労力の点から再びマンボウを飼育することは難しいが、せめてバーチャル空間の中だけでも、マンボウを復活させたい……その想いを実現させるため、凸版印刷株式会社と私はマンボウの3Dモデリング化を開始した。

 私は凸版印刷株式会社のスケジュールに合わせてオンライン会議でコメントする程度だったが、生き物の動きを3Dモデルに反映するのは簡単ではなく、試作で作られたマンボウのデザインや動きは、リアルのマンボウからかけ離れていた。体が横に曲がったり、鰭の動かし方がおかしかったりしたので、実物のマンボウの動画で動きを注意深く観察し、どこがどうおかしいのか何度も細かく指摘していった。3Dモデリング開発チームは大変だったと思うが、かなり実物に近いマンボウの動きを再現できたと思う。改めて感謝したい。 
 
 奇しくも、私は道の駅でプロジェクションマッピングを試運転させるとのことで呼ばれ、3月11日に気仙沼入りし、翌日、再建途中の道の駅を視察させて頂いた。

 宮城県はウシマンボウも漁獲されるため、マンボウだけでなく、ウシマンボウも登場させて欲しいと提案した。CGと言えど、実物大の全長3 m以上あるウシマンボウが壁に登場すると、かなり迫力がある。ウシマンボウ登場にはいくつか条件があるので、道の駅『大谷海岸』に行かれた際は、是非バーチャルアクアリウムコーナーでしばらく映像を眺めてみて欲しい。

■コロナ対策に複雑な思い

 コロナ対策のまん延防止等重点措置を「まん防」と略すことに批判が上がり始めた3月下旬、道の駅『大谷海岸』はオープンした。世の中の雰囲気を察し、マスコットキャラとして推しているマンボウにマイナスのイメージがつくのを懸念した気仙沼市は、3月31日付けで「まん防という略称は慎重に使用して欲しい」と県内のマスコミ各社に異例の要望書を出し、全国的に話題になった。

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