阪神・梅野隆太郎 (c)朝日新聞社
阪神・梅野隆太郎 (c)朝日新聞社

 侍ジャパンのメンバーに選ばれ、東京五輪出場を目標に掲げる選手は少なくない。日の丸を背負い、地元開催の五輪でグラウンドに立つことはかけがえのない時間になり、野球人生の大きな財産になる。

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 だが、ファンとすれば複雑な気持ちだ。チームに不可欠な主力が欠けることで、ペナントレースの行方に大きく影響する可能性もあるからだ。しかも、今回は新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、五輪開催に反対の声が多いという背景がある。

 首位を快走する阪神の正捕手・梅野隆太郎も東京五輪の有力候補だ。5月6日にAERA dot,で「阪神・梅野が東京五輪出場の有力候補へ 巨人・小林は厳しい状況に」という記事を配信すると、SNS、ネット上での阪神ファンからは「五輪に派遣してほしくない」というコメントが多く寄せられた。

「普段なら名誉な事だけど、今年に限っては五輪への出場は勘弁願いたいなあ。梅ちゃんなら当確だろうけど、もしコロナ感染したりして長期離脱ともなれば、チームへの影響は計り知れない」、「選ばなくていいです。梅野が怪我したり、コロナに感染したりして長期離脱ということになれば、チームへのダメージが大きすぎるし、リーグ優勝も厳しくなる。それに、阪神ファンは、北京五輪で主力選手が怪我したり不調になったりしたのをきっかけに、リーグ優勝できなかった2008年のことを絶対に忘れていない。あの時の二の舞いは御免だからな」

 このような意見が少数ではないことに気づかされる。阪神ファンは五輪の開催された年のペナントレースで苦い思い出がある。08年だ。阪神は前半戦から首位を快走。7月には2位に最大13ゲーム差をつけたが、腰痛を抱えていた新井貴浩が8月に開催された北京五輪の4番で強行出場したことにより、症状が悪化した。帰国後に病院の診断で疲労骨折と判明し、長期離脱。主軸を欠いたチームは失速し、猛追した巨人の逆転優勝を許した。結果論になってしまうが、阪神ファンからすれば「北京五輪で新井に無理をさせなければ…」という心情になるのも無理はないだろう。

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