先ほどの女性スタッフに尋ねると、「直前に入ってきて、そのまま会見が始まるので、挨拶する時間はないと思います」という。仕方がないので、名刺を渡し、「ぜひ今日は指してほしい」と言伝をお願いした。女性スタッフは「広報官に伝えておきます」と快く受け取ってくれた。

 今度こそ記者の思いは通じるだろうか。18時55分に小野広報官が入室した。

「できるだけ多くの方にご質問いただくために、一問ずつ簡潔に質問をお願いします」

 こう注意事項を説明し始めた。さすがにこのタイミングで挨拶はできない。18時59分。加藤勝信官房長官、新型コロナ対策分科会の尾身茂会長らが入室。19時ちょうどに菅首相が入室した。定刻通りの開始に几帳面さが伺える。

 菅首相は緊急事態宣言の延長などをおよそ15分程度、説明した。その後、約45分間に渡って記者との質疑応答があった。

 首相会見ではまず、新聞やテレビなどが属する内閣記者会の幹事を務める社が代表質問をするのが習わしだ。現在、幹事の東京新聞と共同通信が質問の口火を切り、その後、挙手した記者の中から司会の小野広報官が指名をしていく。

 まず指名されたのが、2列目に座る毎日新聞。次に指されたのが1列目のTBS。

 小野広報官が「それでは奥の列から」と水を向けたので、背筋を伸ばして手を伸ばしたが、ラジオ日本が指名された。思いが通じていないのかと思ったが、まだ序盤。気を取り直して手を上げ続けた。

 その後は産経新聞、日本テレビ、イタリアのSky TG24が指名された。続いて京都新聞、時事通信、フリーランス記者が指名されていく。ここで、前列が2名指名されたあとに、最後列で1名指名される法則があることに気づく。

 さらにもう一つの法則に気づく。首相の答えが終わると、小野報道官が「では次は●●新聞の××さん」などと、すべての記者が手を上げ切る前に、すぐに次の記者を指名してしまうのだ。

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事前に指名者が決まっているのか