野崎さんは生前、自身の遺産、約13億5千万円を地元の田辺市に寄付する意向を示していた。だが、妻だった須藤容疑者は、その2分の1にあたる約6億7千万円を受け取る権利があると主張していた。

 田辺市が作成した「故野崎幸助氏による遺贈に関する報告書」という内部文書に野崎さんが残した有価証券の中に「芝浦機械」「三菱地所」「三菱UFJフィナンシャル・グループ」の3銘柄が含まれるという記載があった。3つの銘柄とも今年になって株価は上昇。野崎さんは株式以外にも投資信託なども保有し、金融商品の評価が上がれば、受け取れる遺産が増える可能性もある。

 しかし、須藤容疑者が野崎さんを殺害したと確定すれば、相続する権利を失うこととなる。和歌山県警は、今も須藤容疑者の認否を明かしていない。

「白浜の保険金殺人でも自供は得られなかったが、検索履歴がポイントとなり、裁判で実刑判決を勝ち取れた。こちらは3年近くも捜査をしており、須藤容疑者の自供がなくても起訴できる材料を十分に揃えて逮捕している。取り調べで材料を出して行けば、須藤容疑者はいつまでも否認はできないと思う」(前出の捜査関係者)

 事件の全容が解明される日は来るのか。(今西憲之)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら