この流れは、リアル店舗で言えば「箱もの経営」からの脱却に他なりません。要は、オフラインの強みを生かしつつ、いかに「顧客接点」をオンラインで持つかが死活問題ということ。なので、消費者一人ひとりを深く理解するための細かいデータを収集する基盤やシステムの整備、つまりDXが必要不可欠になっているわけです。

 リアル店舗のDXが急がれている背景には、言うまでもなく、すっかり定着したECサイトの影響があります。

 たとえば、多くの消費者が店舗で実際の商品を見ながら、その商品を Webで検索してレビューを確認し、価格を比較してより安いECサイトで 購入しています。この購買行動の変化にリアル店舗はどう対応するか。

 そこで開発されたテクノロジーが「電子棚札」です。これはオフラインとオンラインをつなげ、リアルタイムで一つひとつの商品の値札を自動的に差し替えていくデジタル技術。こうしたECサイトと同じように価格調整などを行う取り組みは、今後リアル店舗の主流になっていくでしょう。

 当然ながら、リアル店舗で商品を販売するメーカーにとっても「顧客接点」をより多く持つことは死活問題です。大量の商品が並ぶ中で、他社商品ではなく、自社製品を買おうと思ってもらうためには、やはりオフラインとオンラインの組み合わせが必要不可欠でしょう。

 そこで注目されているのがBeacon(ビーコン)技術の活用です。Beaconとは、一定時間ごとに数十メートル範囲に信号を発する装置の総称。Bluetooth Low Energy規格(BLE)を搭載したBeaconは消費電力が小さく、コイン電池でも長時間の使用ができ、比較的安価なのが特徴です。

 たとえば、これを商品棚に取り付けておけば、自社商品に近づいたお客さんのLINEなどにキャンペーン情報などを通知したりできます。これにより、少なくとも自社商品の存在に気づいてもらえるわけです。

 Beaconを人やモノに組み合わせると位置関係が測定可能になります。とてもシンプルで安価なテクノロジーですが、道路交通情報の通知や紛失防止など、様々な場面で活用されており、これからも活用事例が増えていくことは確実でしょう。

 DX人材には、自分が関わっている業界に留まらず、こうした「デジタル・トレンド」について、広くウォッチし続けていくことが求められているのです。