デジタルツインによって設備保全・メンテナンス時期の予測や最適な製造プロセスの設計などが飛躍的に効率化、あるいは自動化されます。今後は製造業だけではなく、大きな設備を持つ電力や石油などの業界でも同じように応用が加速していくでしょう。

■「トランザクション・レンディング」がメジャーに!

 DXの遅れが目立つ金融業界ですが、一方で「FinTech(フィンテック)」 というトレンドワードもあります。テクノロジー的には、投資アルゴリズムのAI化やブロックチェーンの活用などがよく知られていると思います。

 ただ、その本質はあくまでも「金融の民主化」です。特定の企業が独占していた金融サービスが、デジタル技術を活用することによって、顧客視点で様々な企業(非金融業)が提供する、より便利で高付加価値なものになっていく。この流れは海外では既にメジャーになっており、今後日本でも確実に進んでいくでしょう。

「民主化」という意味で、特に強調しておきたいトピックがあります。それは「トランザクション・レンディング(デジタルデータ化されている取引履歴を利用して審査を行う融資)」です。

 従来の金融機関よりも、たとえば営業ツールや会計ツールを提供している会社(非金融業)のほうが、顧客の営業・決済状況などに関するデータをより詳しく収集しているケースが多くあります。それをもとに「与信」の仕組みを作れば、より短期間で適切な融資サービスを提供することが可能になる。実際、Amazonや楽天などは、出店している事業者向けにトランザクション・レンディングを行っています。

 もちろん、顧客データの利用は金融サービスに限りません。顧客データは「新しい石油」とも言われています。それをどのように価値に変換するか、戦略的に考えていくことがまさにDXの肝であり、どの企業にとっても喫緊の課題なのです。

■「Beacon(ビーコン)」が当たり前になる!

「新しい石油」の発掘・活用が最も急がれている業界の一つが、O2O(Online to Offline)やOMO (Online Merges with Offline)という顕著なDXトレンドが存在する小売業界です。

 小売業界では今後、オフラインとオンラインが統合されて、よりよい購買体験を作り出す動きが加速していきます。早晩、リアル店舗とECサイトの垣根もなくなるでしょう。

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リアル店舗のDXが急がれている背景