武田総務相は月に1度の割合で、全国の知事や市区町村の首長にメールを送信。こうした総務相の直接メールは2019年12月以降、送られてくるようになったという。

 立憲民主党の原口一博副代表は「私が総務相(民主党政権)の時はこうした上から目線なことはしていなかった。これではお上が地方に命令を出すように見え、違和感がある。武田総務相のこうしたやり方はおかしいのではないか」と語気を強めた。

 ワクチン接種が進まず業を煮やした菅政権は東京などに1万人規模の接種会場を設置し、5月24日から国が自ら接種を始めるとぶち上げた。

「菅総理の側近の和泉洋人総理補佐官らがトップダウンで大規模接種センターの設置を決めました。地方自治体や関係省庁との調整は全くなされていない状態で進んでいます。自治体から受け取った接種券を国のセンターに持参すれば、予約なしで接種できるようにすると言っているが、見込み数を把握しないで、どうやってワクチンを準備するのか。国と地方自治体とのすり合わせも全くできていません」(厚生省関係者)

 これまでは厚生労働省が「自治体サポートチーム」を立ち上げ、調整役となっていたが、総務省が新たに「新型コロナワクチン接種地方支援本部」を開設。トップには武田総務相が就任した。

「菅総理はコロナ対応で後手に回り、ワクチン確保、承認などでも遅れをとった厚労省に対して不信感を抱いている。『厚労省は使えない』と田村厚労相に文句を言うシーンもあった。ワクチン供給が進まない上、コロナの感染拡大が収まらず、3度目の緊急事態宣言を出す羽目になった。このままではとても7月末までに高齢者のワクチン接種は終わらない。そこで総理直轄といわれる総務省にやらせようとなった。何としても東京五輪・パラリンピックを開催し、自分の手で解散総選挙をやりたい菅総理は、なりふり構わず必死。そのおかげで自治体を巻き込んで大混乱です」(自民党幹部)

 しかし、掛け声だけでは、ワクチン接種は進まない。日本のコロナワクチン接種率は現在、人口のわずか1.1%と、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国で最下位だ。日本はアジアでも中国やインド、シンガポール、韓国にも後れを取っている。

 武田氏のメールの最後には<災害や感染症への対応など、ご心労の多い日々かと存じます。くれぐれも、ご自愛くださいませ>と記されていた。

 しかし、心労を多くさせているのは、菅総理や武田総務相自身ではないのかとの声しきりである。(今西憲之)